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パンケーキから見る地域の魅力

食べ物の概念

本来はしょっぱいものを甘くして食べてみたり、反対に本来は甘いはずの物を塩気のある味付けにしてみたり、人が作り出す料理のその先にはこのような逆転現象が起こる場合があります。この食べ物はこういった味であるという観念は、最初にその料理を作った人が広めたのでしょうか。それともその料理を最初に口にした人が広めたのでしょうか。何が正しいという絶対的な定義は、案外この世の中にはそう多くないものです。それが食べ物の場合であれば尚のこと、人それぞれの好みによって良し悪しの基準が分かれたり、時代や環境の変化によって美味しいものの定義が変わったりもします。

少し洒落た飲食店であれば、流行の物事には敏感に反応を示すでしょう。甘くあることが当然で正しいはずの食べ物だったものを、時代の流れと共にアレンジを加えてみる決断も早いはずです。中でもパンケーキはそういった料理を先導しているのではないでしょうか。かつてパンケーキといえば、喫茶店などで出てくる二段重ねか三段重ねの物が人気でした。一番上のパンケーキのそのまた上には、溶けかけた薄黄色のバターと、甘いメープルシロップがかけられていたはずです。しかしそういった定番も時代と共に進化を遂げていき、現代のパンケーキは従来通りの甘いものと、新たに出てきたほとんど甘みの無いものとに分かれると言えるでしょう。

枠組みを設けるとすれば、甘くないパンケーキはもはやスイーツの分類ではないのかもしれません。れっきとした食事として、一つのメニューが成立しています。甘いはずだったパンケーキを土台とし、ツナやトマト、レタスやチーズなどを組み合わせているのです。食事系パンケーキはわざわざ言うまでもないほどに、食事メニューとしての成功を収めています。ケーキでありながらケーキではないという、一度で二度の楽しみを味わえるという側面もあるのでしょう。

しかしそうはいっても、従来通りの甘いパンケーキはその人気が衰えることを知りません。甘いものが嫌いという人ではない限り、基本的に味覚の中で甘みというものは人に幸せを与えるものです。酸っぱい刺激に表情をすぼめることもありません。辛い刺激に口の中を覚まそうとする必要もありません。甘みはただほっこりと人間の舌の上に乗り、ゆっくりと味わうことを最大限許してくれるものなのです。パンケーキは甘いものであるという概念はすでに古い考え方ですが、その一方で決して衰えることのない伝統でもあります。新しいものに出会いすぎた時、古いものに立ち返ってみるのも良いかもしれません。